ロッジ ヴィンテージ スキレット のシーズニング(2017.11.12)
前回紹介しましたスキレットのシーズニングを行いました。
鋳肌がむき出しのキャストアイアン(鋳鉄)の調理器具は購入してそのままでは使用できません。
※プレシーズニング(販売される前にメーカーによってシーズニング済のもの)された製品はそのまま使用できます。最近のロッジ製品(ロッジロジック)、コールマン製品はこれにあたります。最近アップされた記事だとシーズニングの必要のない製品でシーズニングの解説をしているサイトがあまりに多くて気になります。せっかくメーカーできれいにシーズニングしたものをわざわざ壊すようなことが平気で書かれているので注意しましょう。
※今回のスキレットは古いヴィンテージ品ですのでプレシーズニングは行われておらずシーズニングの必要があります。他にはキャプテンスタッグのダッチオーブンなどもシーズニングの必要な製品です。
シーズニングとは日本語では慣らしのことで、キャストアイアンのシーズニングは、あらかじめ塗布されている錆止めを洗い流した後、油を薄く塗布し熱を加えて油を馴染ませることです。
シーズニングすることで鋳鉄の小さなくぼみや穴に油を行き渡らせ、全面に油の皮膜が形成され、くっつかず錆付きにくいキャストアイアンの調理器具が完成します。
鋳鉄というと、くっつきやすいとか錆付きやすいというイメージがあるかもしれません。
これはある意味正解である意味間違いです。
テフロンコーティングのフライパンと同じように使えば確かにくっつきますし、錆びます。
でもキャストアイアンの特性を知り、使い方を守ればくっつきませんし、錆びません。
使い始めのシーズニングと日々の使用後のメンテナンスに若干の手間がかかりますが、正しく使えば一生物ですし、何より美味しいです。
また、使えば使うほど、より厚い皮膜が形成されていきますので、より使いやすく、より美味しくなっていきます。
日本語のサイトを検索すると大体ガス台を使用するシーズニングの方法が紹介されていますが、説明書にはオーブンでのシーズニングの方法が記載されています。
また、本国のサイトを見ても殆どオーブンを使用しています。
おそらくこれは日本ではダッチオーブンやスキレットが入るオーブンがある家庭が少ないから(少なかったから?)だと思われます。
幸い我が家には業務用のオーブンがありますので本場式でオーブンでシーズニングを行います。
大体この説明どおりに進める予定です。
まずこのラベル(この説明書)を剥がします。
最初そのまま剥がそうとしましたが、全く剥がれなかったので、説明書どおり火にかけてから剥がしました。
何十年もそのままだったせいか、思いのほか熱くする必要がありましたが、ぺりっと簡単にはがれました。
そして暖かいお湯で洗剤を使いブラシで取手の部分も含め全体をよく洗います。
これは表面に塗布してある錆止めを落とすためです。
洗剤を使用するのはこれが最後で、実際にスキレットを調理で使い始めたら、二度と洗剤を使用して洗うことはありません。
なので、ここは念入りに行ってください。
今回は新品とはいえ古いものですので側面に錆びつきがあったため、洗剤の後に重曹をまぶして洗いました。錆は完全には取れませんでしたが、おそらく問題ないものとして進めました。
本国のサイトの説明には見受けられず、日本のサイトによく書いてあることですが、洗った後に水と重曹を入れて一旦煮立たせました。
これは洗っただけで取りきれなかった錆止めを浮き上がらせるために行います。
何か出てるような気もします。
その後お湯を捨ててから一旦火にかけて水気を飛ばし、スキレットを少し熱してから、全体に植物油を塗布します。
ちなみに本国では鋳鉄をシーズニングするためのオイルが様々販売されていて、それを使うことが多いようですが、日本ではあまり売っていません。
輸入品で入手可能なものもありますが、非常に高いので、私はオリーブオイルを使用しました。
基本的に無添加の植物油であれば問題ないと思います。
キッチンペーパーなどで取手の部分も含め確実に全面に塗布する必要がありますが、油が均一になれば極少量でOKです。
説明書ではあらかじめ200~250℃に予熱しておいたオーブンに、スキレットを裏返しにして入れ、1時間焼くとあります。
私は250~300℃で1時間半を3セット行いました。
この画像はすでに1回焼いた後のものですが、このように裏返しで焼きます。
また下の段にアルミホイルなどで油を受けると書いてあるのですが、実際は薄く塗っただけでは脂が滴ることはありませんでした。
この状態で1時間半焼き、自然に温度が下がったら再度塗布し焼く、という手順を3回繰り返しました。
1回終了した時点でこのくらい。
取手の部分はオーブンに入れる際にオイルが取れてしまったようでまだらになっています。
ずいぶん黒くはなりましたが、全体的にまだ真っ黒ではありません。
まだ十分ではないと思いましたので後2回繰り返し、
そして完了したのがこれです。
ビシッと黒光りしたいい状態になりました。
油も油分はしっかり焼きついていますのでべたべたしているわけではなく、さらさらです。
ガス台でのシーズニングではなかなかこうはいきません。
シーズニング前と比較するとこのとおり別物です。
シーズニングは初めてキャストアイアン製品を使う前の準備で、これから使用とともに更に皮膜が厚く形成され、どんどん使いやすい(錆びない、くっつかない、美味しい)スキレットに育っていきます。
今回は本場流オーブンでのシーズニングを試してみましたが、使用できるオーブンがあるのであればこちらの方が断然おすすめです。
日本のサイトでよく紹介されているガス台を使用したシーズニングは熱する点が集中するので均一に焼くことが難しく、よほど慣れている人でないとどうしても焼きむらが発生します。
それに引き換えこの方法はオーブンに放り込んでしまえば簡単に誰でも均一にシーズニングできます。
現在はシーズニングの必要のないキャストアイアン製品も増えてきましたが、自分はそのことをすごく寂しく思っていました。
自分でシーズニングから行うことで愛着は全く違うものになりますよ。
便利なことが必ずしも良いことではないということだと思います。
ただし、現実問題としてアメリカのキャストアイアン調理器具メーカーはLodge社以外全て淘汰されました。
唯一残ったLodge社も売上不振であえいでいた中、ロッジロジック(プレシーズニング製品)という起死回生の新たなアイディアで飛躍的に売上が増加し、今では現行品は全てプレシーズニングされています。
企業の存続のため利益を生み出し続けなければいけない民間企業が、今後も生き抜くために企業努力の末たどり着いた製品なので、これを否定することは全く出来ません。
自分はこの古い時代の製品を今後も大事に使っていきたいとおもいます。
なにせキャストアイアン製品は一生ものですから。
2017.11.25 追記
ダッチオーブンでよくブラックポットという言葉を耳にする。
私自身もその「ブラックポット」を目指して使用していた時期があるが、ふとアメリカのサイトをブラックポットで検索してもそれらしきものが全く引っかからない。
西部開拓時代にカウボーイがダッチオーブンを使用していたのは本当かもしれないが、ブラックポット云々というあたりは、おそらく日本であとづけされた話だと思われる。そんなに使い込んだものじゃなくても、色と形状的にブラックポットと呼びそうな気がするし。日本のウィキペディアにはブラックポットについての記述があるが、アメリカのウィキペディアには一切出てこない。
ちなみに古いダッチオーブンやスキレットを検索すると分かるが、当時の製品は現在のもののようにザラザラの面ではなく、ツルツルの面に仕上げられて売られていた。
それを考えても酸化皮膜の層や油などで平らになるとブラックポットなんてことはありえない。